世の中に何百万人もの歌手や音楽家がいる中で歌ったり演奏するだけで生計が成り立っている人は少なく、それからさらにスターになるのはほんの僅かです。スターにはなんとも形容しがたい「華」があってそれに惹かれる人はたくさんいるのですが、華だけではそれが「華」なのかどうかは分かりません。「実」と対比されることで始めて「華」だと分かります。日本のプロ野球の名選手であった野村克也さんはかつてちょうど同時期に活躍した長嶋茂雄さんと自分を「向日葵と月見草」に例えていました。確かにスター選手がいる野球の試合はそれだけで見ていて楽しかったのかもしれませんが、スター選手だって相手がいなければ試合をすることもできません。音楽の世界でもどんなに向日葵になりたくてその資格があっても月見草に身をやつすしかない運命の人はいるし、割り切ってそれなりの「実」を目ざす人もいます。ここでは光と影のように切っても切れない関係にある両者のうち月見草にあえて注目してみたいと思います。(2004.11.05)