音楽とそれを作る人の背景をいろいろと知っていくにつれて、生まれた時から亡くなるまで同じところに留まる人もいれば、逆に何かを捜すかのように落ち着きの無い人もいたりして、「場」と音楽とは深い関わりがあるように思えてきます。御当地の伝統を踏まえたり独特なノリにこだわり続ける人たちの音から感じられるのは安心感や落ち着きや確かさであります。その一方、そういうものが退屈だとばかりに、あちこちから古いものを引っぱり出したり新しいものに飛びついたりと、まるで近所で引っ越しを繰り返す人のような感じの音もあります。同じところに居られない人とはいっても全く「場」がないわけではありません。それは前にも見かけたりその場限りだったりする人が絶えず行き交い、風景までも落ち着きなく変わる都会の交差点のようなところです。思いつきをそのまま音にしてみたものから抜け目なく金鉱を掘り当てたようなものまで。流されるに任せるものから意固地に流れに逆らうものまで。必ずしも浮ついているものではないものも、なにかさまよっている印象の人たちも含めてここでは取り上げていきたいと思います。(2006.09.24)